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厳しさを増す経済・経営環境に立ち向かうために、NICe増田代表理事が送る、視点・分析・メッセージ 。21日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
それでも伸びゆく銃市場



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 「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」

   第127回 それでも伸びゆく銃市場
   
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【権力者は常に暗殺の危険に晒されている】

トランプ前大統領(次期大統領選候補)が、
ペンシルベニア州での集会の演説中に狙撃された。

私も事件発生直後にニュース映像を見たが、スレスレもスレスレ。
弾道があと1cmか2cmずれていれば、
トランプ氏の命は確実に奪われていただろう。

「いつかこんなことが起きるのではないか」と思っていた。

日本での安倍元首相銃殺も記憶に新しいが、
世界中のどこかで、いつも政治家の命が狙われ、実際に奪われている。

強権を振るう、もしくは振るうであろう政治家は、
反発する勢力の怒りを掻き立て、その政策のせいで損失を被ったり、
困難な生活を強いられたりする人々からの恨みを買い、
常に生命の危険に脅かさることになる。
それがわかっているから、要人は警護される。


【狙撃犯の犯行動機に、政治的背景はないのか】

ところが今回の事件の犯人(とされる人物)は、
アメリカの要人警護能力を嘲笑うかのように、やすやすと警備を突破した。

普通に考えれば、とうてい起こり得ない事件であり、
シークレットサービスや地元警察は真剣に仕事をしていたのか、
という批判もあるだろうし、一方で、
狙撃計画を本気で阻止する気があったのか、という疑問も抱く人もいるだろう。

とりあえず謀略説は置いておき、
真犯人は報道されているように、地元在住の20歳の青年だとしよう。
だとすれば動機は何か?
青年はその場で射殺されたというから、もはや真実は闇の中。

報道は、「政治的背景のない孤独な青年の自己顕示型の蛮行」、
という方向で動機を語っているが、本当だろうか。

犯人の高校時代の同級生がニュース番組の取材に対し、
「彼は除け者にされていた。彼はイジメにあっていた」などと答えていたが、
どうにも印象操作の臭いがしてならない。


【新たな対立の火種にしたくないのだろうが……】

「自己顕示型の蛮行」という説明は、あまりに無難過ぎはしないか。

こういう動機なら、共和党も民主党も傷つかないし、
範囲を広げれば、どの国もどの人種もどの民族もどの宗教も傷つかない。
つまり、この事件が新たな分断・対立の火種になる危険はないことになる。

そういう「大人の判断」が有効な場合もあるだろうが、
私はやはり、犯人には一定の政治的背景があったのだろうと感じる。

では、どんな背景があったと推測されるか? 

1.トランプ氏に対する「右」からの不満
2.トランプ氏に対する「左」からの不満
3.その他の政治的理由

大雑把に言えば、この3つだ。


【動機1.「トランプはぬるい」と考える超タカ派的思想】

「その他の政治的理由」は省略し、
トランプ氏に対する「右」からの不満について考えてみた。

世間ではタカ派と目されるトランプ氏だが、
実際の政策は、「右寄りの中間」というのが私の印象だ。
だとすれば、超タカ派傾向の人たちからすれば、
トランプ氏は、「口ほどでもない、生ぬるいヤツ」ということになる。

近親憎悪という言葉がある。

正反対の立場に立つ相手よりも、近しい立場にいながら、
意にそぐわない発言や行動をする人物のほうをより憎む心理だ。

ご存じのように共和党は銃規制に対して消極的だ。
とはいえ、各州が定める銃規制を解除させるところまではいっていない。

日本から見ると、アメリカは銃に対して寛容な印象だが、
実際は厳しい規制を敷く州もある。

例えばカリフォルニア州は、
州全域で小銃などの突撃型武器や大容量弾倉の所持を禁止しているし、
21歳未満の人物への銃販売の禁止や、
オンラインでの弾薬販売規制の措置も設けている。

「銃を持つことは正しく、当然の権利」と信じる人の中には、
共和党やトランプ氏の煮え切らなさを腹立たしく感じる人がいてもおかしくない。


【動機2.トランプ氏を絶対排除すべきという左寄り思想】

一方、トランプ氏に対する「左」からの不満はどうだろう。

昨今の次期大統領選の様相は、
バイデン陣営・民主党に有利に進んでいるとは言い難い。

「このままではバイデン氏はトランプ氏に破れる。
ならば、トランプ氏を排除するしかない」という考え方だ。

とはいえ、銃の規制を望む「左寄り」が、よりによって、
銃を使用して政敵を排除するだろうか、という疑問も浮かぶ。

だが、この考えは単純過ぎる。
反感や憎悪が極限に達している人物や集団に常識は通用しない。
「銃規制に後ろ向きのトランプ氏や共和党に、銃の恐ろしさを教えてやる」。
そういう理屈を付けて行動を起こすことは十分にあり得る。

結局、右からの反トランプも、左からの反トランプも動機となりうるが、
実際、真実を知ることは不可能だ。

ただ、はっきりしているのは、銃火器がこの世にある以上、
それが人に向けられる可能性は常に存在しているということだ。

アメリカの20歳の青年がライフルを手にすることができなければ、
そもそも、この事件は起きようもなかった。


【8年間で5割増。成長著しい銃市場】

それでも銃はなくならない。
それどころか、銃市場は今後さらに伸びると予測されている。

世界の銃と付属品の市場規模は、
2019 年の段階で61億4000万ドルだったが、
これが2027 年までに93億3000万ドルに達すると予測されている。
実に5割増の伸びである。

戦争や紛争の増加がこの趨勢に影響していることは当然だが、
軍事需要だけで、ここまでの伸びは実現できない。
銃市場の成長を支えているもう一つの要因は、護身目的の銃購入だ。

とくに世界市場の60%以上のシェアを持つアメリカでは、
たびたび銃の乱射事件が起きていることや、
コロナ禍による世情の不安定さを理由に、
市民が「護身のため」と、銃を積極的に購入するようになった。

皮肉なことに、銃の脅威が銃の生産・流通を押し上げているのである。


【対話による問題解決を諦め始めた現代社会】

武力に対抗するには、自らも武装するしかない。
この考え方は、民間レベルにとどまらず、
敵対関係にある国家間や民族間、宗教間などでも当たり前になっている。

武器さえなければ戦争にならない、あるいは、
大量殺傷事件は起こらないという道理は、もはや通用する余地がないに等しい。

7月14日の毎日新聞ネット版に以下のような記事が掲載されていた。

「シカゴ大学の世論調査によれば、政治的な目的を達成するためなら、
力の行使も辞さないと考える人が『憂慮すべき』高い水準にあった。
同大は2021年1月にトランプ前大統領の支持者が米連邦議会議事堂を襲撃した事件後、
継続して調査をしており、今年6月に2000人以上を対象にした分では、
トランプ氏の再選を阻止するためなら暴力が正当化されると考える人は10%に及んでいた。
このうち銃を保有している人は3割を超えていた」。

現代は民主主義国家と独裁国家の二極化の時代と言われているが、
民主主義の盟主を標榜するアメリカにあっても、
すでに、対話による問題解決を諦めている人がこれだけいる。

悔しくてならないが、
世界は力で物事を決しようとする時代に、またしても入ってしまった。
そう言わざるを得ない。


【暴力とウソにまみれたこの世で、あなたや私はどう生きる?】

付け加えたいことがある。
暴力を行使することを躊躇わない国家や組織や個人は、
他者を騙すことや欺くこと、陥れることなど、何とも思わないものだ。

逆に言えば、平気で人にウソをつけるような人々は、
状況次第で、人に暴力を振るうことをまったく厭わなくなる人々である。

自分(たち)こそ正義。
そういう思いを強く抱いていれば、人はどんなこともやれる。やってしまう。

そして彼らは口々にこう言う。
「悪いのは相手だ」「やられたらやり返す」「やられる前にやる」と。

だが本当にそれでいいのだろうか。ほかに手段はないのだろうか。
経済や経営にとっての持続可能性と、この考え方は合致するのだろうか。
かと言って、やられっぱなし、奪われっぱなし、殺されっぱなしで我慢できるのか。

難問だ。
でも、難問だからと、考えることをやめてはいけない。

より良い答えを探し続けることこそ人間に与えられた能力であり、
それを放棄しなかったからこそ、人間はここまで滅びずに来られたのだ。

私はこの難問に向き合いながら、事業に取り組む人間でありたいと思う。
みなさんは、どうだろう。

<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>

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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.214 
(2024.7.22配信)より抜粋して転載しました。
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